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[2011.10.11]

医療機関における管理会計と原価計算

 医療機関における管理会計の手法として、まず原価計算が俎上にあがります。医療機関の原価計算は、従来部門単位での収支を図る、いわゆる部門別原価計算が唯一無二の考え方でした。昨今ではDPC請求が普及し、行為別や疾病別などにまで踏み込んだ原価計算手法が重要視されてきています。

 実際に原価計算を導入している医療機関では、その仕組みや稼働の状況は千差万別です。中には、市販のソフトには頼らず、担当者によるエクセルやアクセスによるベースでのオリジナル版を駆使している医療機関もあれば、ソフトを導入してもいつの間にか使用しなくなっていたりする医療機関も多々見受けられます。総じて原価計算の結果を有効に活用できている医療機関はあまり多くはないと思われますがいかがでしょうか。

 原価計算を運用する際に必ずつきまとう問題として、以下のような点が挙げられます。
@人件費や間接部門費の配賦に関して院内(特に医師)のコンセンサスが得られない
Aアウトプット資料の量が膨大で、担当者から定期的に渡されるだけの資料となってしまう
B担当者が変わるとメンテナンスができない(勘定科目の変更や配賦規準の変更、等)
C顕在化された問題点や課題に対する改善策が見いだせない
Dそもそも、原価計算を実施して何をしたいのか(目的)が不明確 …等々
配賦に関しては、DPCデータによって医薬品費や材料費等は診療行為や患者への直下が可能となりましたが、医業費用の約半分を占める人件費等をどのように配賦するかの課題は残っています。

 原価計算を継続的に運用し、活用していくために、以下のような基本的な考え方を持って臨むことをお勧めします。
ア)精緻な結果を出すことに初めから固執しない(配賦規準の設定にこだわりすぎない)
イ)まずは継続的に実施し、傾向を把握していくことに主眼を置く(導入の目的を明確にする)
ウ)出された結果については院内の他科との比較は避け、あくまでも当科での実績推移や、予算との乖離状況を図る
エ)経営者層や部門長、各医師など役職別にアウトプットを選別して提供し、それぞれの立場での見解を求める
オ)DPC病院の場合はパスと連動させて検討する(レアデータの出現に左右されない) …等々

 上記の考え方を実現させる場合は、経営者層と運用担当部署が原価計算導入の目的とその運用に対する認識を統一させ、その共通認識の上で予算とのリンクやDPC(パス)検討部会との連携などについて医療機関全体で仕組みとして取り組むことが求められます。

 管理会計は財務会計と違って完璧な正確性や適法性は求められていません。経営上の円滑な意思の決定に資するものとして、院内でさまざまな手法を取ることが可能です。
 たとえば、医師が管理することが可能な科目のみで構成された簡易版の原価計算を行うという考え方もあります。この方法は、前述の課題にも挙げた配賦規準に納得がいかないような医師に対して有効なものとなります。
 実際には費用のどこまでを医師の管理下とするかを決める必要がありますが、たとえば事務方の費用や建物家屋の固定費、本部負担費などを計算から排除することによって、医師が動く(医療行為を行う)ことで直接的に発生する収入と費用により焦点を絞った原価計算となります。
 経営者層にはすべての科目が配布された版を、医師には自部門の医師管理可能費のみが配布された版を提供し、それぞれの視点で傾向を把握し、問題点の検討にあたります。

 管理会計の手法は原価計算だけではありません。また、DPC病院だけが掘り下げた検討を行うことが可能という訳でもありません。従来院内で作成している経営資料の使い方を見直し、より有効に活用していくことで管理会計の充実が図られることになります。
 たとえば損益計算書には診療科別患者1人当たり診療単価や診療行為別単価、医師1人当たり必要患者数や入院待機患者数、手術室稼働状況、各種加算の算定状況など、収入科目を中心として掘り下げていくべき検討課題が多々見え隠れします。

※前月分の経営資料は翌月のいつまでに作成され、経営会議に諮られているでしょうか? 「経理の締めが遅い」という現場の事情を看過していると、それだけ経営判断の機会も遅くなります。翌月の早い段階(前月実績に対して遅くとも次月中旬)で作成し、検討する必要があります。



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